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川端康成 『ほくろの手紙』(『愛する人達』に収録)

“The Mole” by Yasunari Kawabata This short story is written in the form of a letter. Sayoko, the protagonist, writes a letter to her husband. The story unfolds around a mole she has. Through the mole, all the delicate, complex, and conflicting emotions unspool. I was thoroughly impressed by this unique perspective of Kawabata’s. Readers wonder what this mole represents. Sayoko’s ego? Her identity? Her secret? Sayoko has a habit of touching her mole, which her husband detests and orders her to stop it. Still, she never does. That in the end leads to her husband inflicting violence on her. What is curious is that she seems to be intentionally fiddling with her mole to draw his attention towards her or even to induce abuse.


‘“What’s happened to your mole?” I was waiting for you to say, but after that the word “mole” disappeared from our conversation. And perhaps many other things disappeared with it.’

When her husband stops using the word “mole”, everything else is also gone. The mole was the only and the last connector between the two, both mentally and physically. As with other stories of Kawabata’s, intricate emotions are expressed between the lines, which fascinate and capture the readers. We sort of fill in the blanks on our own, sometimes being baffled and confused. This piece is so delicately and elegantly crafted. Kawabata is superb.

 

川端康成 『ほくろの手紙』(『愛する人達』に収録)

2冊の本

ほくろを中心にして展開する短編。ほくろを通して感情の機微が交錯する。まさに川端ならではの作品だ。主人公(小夜子)が夫に認めた手紙によって二人の関係が解き明かされていく。小夜子の癖はほくろをいじること。夫はそれが気に入らず、止めるように、ほくろを除去するように妻を諭す。 ほくろが何を意味するか。小夜子のエゴそのもの?あるいは自分のアイデンティティの核?それとも秘密? 言うことを聞かない妻。夫の暴力性は高まっていく。夫は妻に手を上げる。不思議に思えるのは、小夜子が夫の暴力性を自ら誘引している節もあることだ。


「『どうせなおりませんわ。手をしばって頂戴。』と、わたくしは両手を合掌するようにして、あなたの胸の前へ差し出しました。わたくしというものをみんな差し上げるという風にでございました。」

夫がほくろを取れと言わなくなった時に、その癖は自然に治っている。


「『黒子はどうしたい。』と、あなたが言って下さるのを、わたくしは待っているような風でしたけれど、それからもう黒子という言葉は、二人のあいだになくなってしまったのでございました。多分それといっしょに、たくさんのものもなくなって行ったことでございましょう。」

黒子という言葉と共に、その他たくさんのものが無くなってしまう。ほくろが二人にとって唯一無二の接点(精神的且つ身体的な)であった。自分のことを認めてもらいたい、構ってもらいたい。自己承認欲求も見え隠れする。同時に男性の女性を自分の思うように仕向けたい支配欲も。そこに暴力性、虚偽、家族愛が入り込む。読者は小夜子の一方的な語り、視点の隙間を埋めていく、時に混乱しながら。 川端作品ならではの繊細さ、視点、心理描写。たった一つのほくろから様々な人間模様が垣間見える。見事としか言いようがない。とても印象的な作品であった。 『黒子の手紙』、一読をお勧めします!

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