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『旅する鍼灸院』須藤隆昭

尊敬している友人から一冊の本を薦められた。その名も『旅する鍼灸院』。著者は、あんずの種という鍼灸院の院長。



読みやすく、また、須藤氏の人生や考え方に共感することが多く、一気に読み終えた。立命館大学探検学部に所属し、ユーラシア大陸24か国を9ヶ月かけて横断。その旅で得られた財産は「ナントカナル」「ナントカナル」の呪文。その後地元の雑誌編集者として働いている時に鍼灸院の取材をすることに。そこで出会ったのが師、吉川正子先生。吉川先生に感化された著者は専門学校で鍼を学び鍼灸師の資格を得た後、台湾、NYにて武者修行。1991年に自身の鍼灸院を地元釧路に開院する。2015年には宮古島に分院を開設し、今に到る。


上記の経歴だけを見ただけでも興味深い。とにかく、須藤氏の人生には旅がつきものである。「ナントカナル」の呪文を武器に、世界横断、日本縦断、まさに「旅する鍼灸師」である。


まずは、須藤さんの恩師、吉川正子先生の言葉から。


「『わたしが学んで得たものはすべて教えますからね』

『須藤さん、鍼ってホント凄いですね』という言葉は何度も聞いた。『鍼の可能性を信じる力』、『鍼をこよなく愛する力』、この2つを僕に伝授してくれたことが一番の財産になった。

『陰陽五臓の調和を整え、気血の循環を良くすれば、どんなものも自ずと治る』僕の鍼治療にようやく核になるものを教えて頂いた。核はシンプルであり、全体を含んでいた」


自分の専門分野の可能性を信じ、それをこよなく愛することの重要性。これはどの分野でも当てはまる。核になるような大事な考えはシンプルであることが多い。自分の専門分野を突き詰め、全体を包みこむような核を煎じ詰めていかなければと思った。


以下、旅に関する含蓄ある言葉。


「旅も人生も迷子のような時を過ぎ、幸運な偶然の出会いから天職になるようなことが始まるのだろう」


「無為の時間を過ごすことが大事なのは、すでに経験上確信していた。忙しく仕事をしている時に無為な時間を確保するのは難しい。だから非日常の旅ではそんな時間を大切にしている」


同感である。この人生がいかに偶然に支配されていることか。ふとしたきっかけで人生の針路は変化する。非日常で無為に過ごす時間がいかに貴重であるか。効率のみを求めていると、息苦しくなり、硬直してしまう。多忙な日々から離れてそれを実感する。


「人間力を高めるためには、何のために働いているのか、つきつめると『何のために生きているのか』を知ることが必要になってくる。航海には羅針盤が必要なように、働いて行くためには理念が必要だ。掲げた理念は壁に貼っていても意味がない。みんなの腑に落ちるまで何度も何度も勉強する」


まさにその通りである。何のための仕事なのか、日々に追われると、根幹にあるべき理念や哲学が疎かにされる。軸である羅針盤が必要で、それは、日々のコミュニケーションを通して、一人一人の腑に落ちることが肝要である。だからこそ組織のトップは日々のコミュニケーションを怠ってはならない。


須藤さんの人柄、ユーモアも含め、とても勉強になる一冊でした。


 

“Travelling Acupuncturist” by Takaaki Sudo


The author is a very unique acupuncturist who loves travelling. His life revolves around trips. When he was a student, he was a backpacker spending 9 months crossing Eurasia. After coming back, he made a serendipitous encounter with his master, who taught him the beauty of acupuncture. He went to Taiwan, China, and New York to train himself and eventually he founded his own clinic in Hokkaido in 1991.


This book taught me three invaluable lessons. First, it is crucial for you to love and believe in what you do professionally. Second, the importance of education. He has devoted his life to educating and training young staff over the years. Finally, travels can be hospitals as well as schools. Travelling can educate and heal us.


Probably, it is high time that I travelled both physically and metaphorically.


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