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『ふたり暮らし』角田光代

2010年の短編集『マザコン』に収録されている短編。角田光代は直木賞作家で、多くの作品は映画化、テレビドラマ化されている。2021年には約5年を費やし、源氏物語の現代語訳を完成させた。主人公は、女性、38歳、独身。母親は主人公をクーちゃんと呼び、主人公は母親をノブちゃんと呼ぶ。母親に言われるがまま、女子高、女子大へと進む。29歳の時に結婚に最も近付いた相手がいたが、結局、母親の反対がきっかけで断念。それでも自分の人生を誤る前に気づかせてもらったと母親には感謝している。自分の人生は自分で決めていると思い込んでいる。姉と正反対なのが妹のモンちゃん。20歳の時、実家を飛び出す。27歳の時に同じ職場で出会った同僚と結婚、二人の子供がいる。教育熱心であった母親とは反対に子供達を塾に通わすことはない。整理整頓されている実家とは反対に家は散らかっている。料理はせずに惣菜で済ませる。妹は姉の人生が母親に支配されていると断言するが、姉の方は妹の方こそ母を意識するがあまり、自分の人生を縛られていると内心感じている。母親と娘の独特な関係について見事に描写している。姉妹どちらにとっても母親という存在が不気味なほどの支配力を持っていることに気づかされる。母親を忌み嫌うがあまり、頑なに母親とは正反対の道を歩まざるを得ない妹。無意識に、母親に対して自己防衛措置をとっているが、それにすら気づいていない姉。姉妹ともに好むと好まざるとに関わらず、母親の呪縛からは逃れられない。どきっとするのは、次のような文章だ。妹の母に対する分析。「自分自身への復讐よ。おねえちゃんが自分より幸せになることは許せないの。ひとりぼっちのままでいさせることが、自分に対する復讐なんだよ。」姉の母に対する分析。「母は私を復讐の道具にしているのではない、母は私を自分だと思っているのだ。あの場所で、ひとりぼっちで、土を掘り返しているべき自分だと。」母親の元から父親が去って行った日、母親は「シャベルを握った手を何度も土に突き立てていた」。何気なく描写されるありふれた東京の一場面の中に、寂寥感、呪縛、女性としての性が立ち上がってくる。母親と娘の関係、僕には掴みきれない感情もあったが、ディスカッション参加者たちの心を掴んだ短編であった。今度は彼女のエッセイを読みたい。

本とコーヒー


 

“A House for Two” by Mitsuyo Kakuta


Kakuta was awarded the Naoki Prize in 2005 and many of her works have been adapted into films. Recently, she translated “The Tale of Genji”. This short story deals with the unique relationship between the mother and daughters. The protagonist is a woman, single, and 38 years old. She keeps no secrets and everything open between her and her mother. When she was 29, she nearly got married, but failed mainly due to her mother’s objection. Despite that, she is grateful to her mother for helping her not to make grave mistakes in life. In contrast to her, her younger sister leaves home when she is 20. She gets married when she is 27 and has two children. She hates her mother and does the opposite of what she does: leaving the house messy, preparing ready-meals, never dressing her daughter in pink. Both of them are restrained by their mother without them realizing. The younger sister cannot help doing the opposite of her mother while the elder sister subconsciously copes with her mother by assuming a false self. I felt the horrifying presence and influence of a mother on daughters. Kakuta’s depiction of women’s psychology is brilliant.

 

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