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形容詞が戻ってくる! 解題

The adjective has come back, after ten year's exile. (Inside the Whale, 1940)

10年の亡命の後に形容詞が戻ってきた。



オーウェルのヘンリー・ミラーの『北回帰線』を形容する一文。まず、この『北回帰線』が出版されたのが1935年。ということは10年間の亡命というのは1925年からということになろう。特に1930年代というのはイギリスにとって政治的にも芸術的にも不毛の時代だとオーウェルは言う。


1930年代というのは知識人達が共産主義思想に傾いていった時代。戦争を経験したことのない世代が政治的な小冊子を書く。彼らは、第一次世界大戦を経験し、心に傷を負った「虚な」人間になってしまった世代とは違っていた。


1930年代という文学的傑作が全く生まれなかった時代に現れたのがこの1冊だとオーウェルは説く。英語の言語の特質として形容詞の豊富さが挙げられるであろう。小説の描写の良し悪しは、作家の形容詞の使い方に依ると言っても過言ではない。「形容詞が戻ってきた」という表現そのものに痺れた。


次回もオーウェルのはっとさせられる一文を紹介します!




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