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東山彰良『流』

「人には成長しなければならない部分と、どうしたって成長できない部分と、成長してはいけない部分があると思う。その混合の比率が人格であり、うちの家族に関して言えば、最後の部分を尊ぶ血が流れているようなのだ」

台湾に来る前に知人から東山彰良氏の『流(りゅう)』を勧められた。とにかく面白いから読んでみて、と。本書は2015年に直木賞を受賞した。


主人公は葉秋生(イエ チョウシェン)、台北の高校に通う17歳。祖父は葉尊麒(イエ ズンリン)、山東省出身で、蒋介石と共に台湾に逃れた。祖父の過去は闇に満ちており、山東省にて何十人もの命を奪った過去を持つ。その荒々しい破天荒な祖父が突然殺害される。物語はその犯人探しを中心に展開する。普段ミステリー小説はあまり読まないが、疾走感ある文体で、最後の犯人を突き止める所までぐいぐい連れていかれた。


この小説の一番好きな点は台湾の複雑な歴史を中国大陸との関係において、非常にリアルに描いている点だ。フィクションのプロットの中に史実を巧妙に織り交ぜている。台湾の悲哀、外省人達の葛藤、血の宿命。台湾の歴史を新しい角度で知ることもできるし、純粋にミステリー小説としても文句なしの面白さである。


「中国の土を踏んでまだ間もないが、わたしは理解しはじめていた。この国は、大きいものはとてつもなく大きく、小さいものはあきれるくらい卑小なのだと。ちっぽけな台湾や日本のような平均化を拒絶する、図太いうねりのようなものを感じた」

数年前に親友が当時住んでいた大連に行った時のことを思い出した。ちょうどあれはクリスマスの頃だった。マイナス8度の中、十代の音楽隊の若者たちが笑顔一つ見せずにクリスマスソングを唄っていた。朝食の飲みものの蓋に凄まじい勢いでストローを突き刺す風景。大陸の強さがあった。厳しさがあった。


新鮮な感覚を覚えたのは、この小説における中国語の使い方である。「你在做什麼」(なにをしとるんだ)というルビの付け方に言語使用の自由さ、面白さを見た。東山彰良氏のインタビューを見たが、全て普通話で行われていた。祖父は中国山東省出身の抗日戦士、台湾で生まれ、日本で育つ。国籍は中華民国である。生い立ち、作風共に独特だ。これからも東山氏の著作を読んでいきたい。


 
“Ryu” by Akira Higashiyama

“Ryu” (meaning flow) was written by Akira Higashiyama, who was born in Taiwan and grew up in Japan. It was awarded with the Naoki Prize in 2015, one of the most coveted literary prizes in Japan. What I really liked about this novel is the way in which the complex Taiwanese history in relation to China’s mainland was masterfully interwoven with the plot of fiction.


The protagonist is Taiwanese and a high school student, growing up in Taipei. His grandfather fled China to Taiwan after the civil war in 1949. He had a complicated past where he killed a large number of people in his province. The story unfolds itself with the protagonist’s quest of who killed his grandfather. Reading this book could provide us with a refreshing and unique angle from which we can review the intricate Taiwanese history. As a mystery, it is also a page-turner.


What I found intriguing is the author’s usage of Chinese in the Japanese writing. In the text he writes some of the Chinese phrases with their meaning in Japanese adjacent to them. That is quite effective in reminding the readers of the setting and in a way liberates the boundary of Japanese. I really enjoyed reading this novel.

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