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独特な韓国人作家による一冊。『菜食主義者』📚by ハン・ガン

Han Kang “The Vegetarian”


ハンガン、初体験。何人かの人から勧められ、読んでみた。韓国といえば去年の『パラサイト』で度肝を抜かれたが、皆さん同様、『菜食主義者』でも打ちのめされた。この物語は3つの中編から成っており、1つの長編と捉えることも可能であるし、全て別個の作品としてももちろん読める。まず、構成が素晴らしい。突然菜食主義者となる物語の中心人物、ヨンへの周りにいる3人の視点からそれぞれの物語が語られる。まずはヨンヘの夫、そして芸術家であるヨンヘの義理の兄、最後にヨンヘの実姉。ぐいぐいと物語に引き込まれた。独特な比喩、プロットの急展開、精緻な描写力。歴史、孤独、欲望、破壊、家父長制、近親相姦、芸術、狂気、獰猛さ、植物性、退化、進化、その他諸々のテーマが織り込まれている。


この壮大な物語の中心にあるイメージは、植物であり、花である。第一部の題名は『菜食主義者』。第2部は『蒙古斑』、第3部は『木の花火』。第1部では、『夢』のせいで突如ベジタリアンとなったヨンヘが、無理矢理に肉を食べるよう家族から促される。特に強烈なのはベトナム戦争に従軍したこともある父親である。頑なに拒否する娘を殴る。それは今に始まったことではなく、幼い頃からの父親の暴力を読者に想起させる。第2部では、ヨンヘの身体にある蒙古斑が義兄に花のイメージを喚起する。そのイメージを凌辱したいという抜き差しならない欲望に駆られる義兄。ただ実際の行為に至った時に感じたのは、むしろ性的なものからはかけ離れた静的なものであった。第3部では、木が、森が、緑色の花火のように燃え上がっている光景を実姉が粘り強く凝視するところで物語が終わる。


もちろん、この植物(静的なもの)と対照的に描かれているのが、戦争、性的欲望、暴力性といった人間の動物性、獰猛さであることは明らかであろう。その木が緑色の花火のように燃え上がるイメージは象徴的である。


人間が植物になっていくというイメージとして宮崎駿が登場するシーンがある。

「宮崎駿のアニメのように足跡から花が咲く場面を入れてみようか?」

中国人初の芥川賞作家、楊逸の『時が滲む朝』にも尾崎豊の歌が自然に挿入されていて、新鮮な驚きを覚えたものだが、今回の作品でも宮崎駿が何気なしに言及されていて、国や文化を越えてのやり取りを嬉しく思った。


外国文学を読む醍醐味は、その国の文化に触れられることであろう。今回は料理の描写や独特の比喩表現に興味を持った。ビビンパ、チャプチェ、サンチュ、キムチ、ナムル、高麗人参、スモモ。


『彼女は墓のように疲れていた』

『梳いていない髪の毛が粗い海草の束のようにもつれていた』


独特である。


ハンガンという独特な作家に出会えたこと、この本を勧めて下さったみなさんに感謝したい。ありがとうございました。完全にファンになりました!


最後に気に入った文章をいくつか引用します。


「ふとこの世で生きたことがない、という気がして彼女は面食らった。事実だった。彼女は生きたことがなかった。記憶できる幼い頃から、ただ耐えてきただけだった。彼女は自分が善良な人間だと信じ、その信念のとおり誰にも迷惑をかけずに生きてきた。誠実だったし、それなりに成功し、いつまでもそうであるはずだった。しかし理解できなかった。その古くて朽ちた仮設建物と長く伸びた草の前で、彼女はただ一度も生きたことのない子どもにすぎなかった」


「お姉さん、わたしはもう動物じゃないの」


「長い間孤独だった人間だけが持つことのできる堅固な視線で、車窓を叩く激しい雨脚を眺める。マソク巴を過ぎると、六月も終わりの森が道路の両側に広がる。豪雨に浸った森は咆哮に耐えている巨大な獣のようだ」


この小説の翻訳家、きむふなさんの日本語も素晴らしかったです。




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