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『トリニティ、トリニティ、トリニティ』 小林エリカ

翻訳者のBrianから紹介され、いつか読もうと思っていた。今日Yuki(@booknerdtokyo)さんが企画したイベントに参加し、小林エリカさん (@flowertv)ご本人と翻訳者Brianの話を聞くことができた。最近参加したウェビナーの中では群を抜いて興味深い内容であった。漫画家、小説家、ヴィジュアルアーティストと様々な顔を持つ多才な方であるという印象の上に、科学者、研究者としての一面、その受け答えの真摯さも加わり、小林さんの作品により興味を持つに至った。今日おっしゃっていた内容の中で特に印象に残っていることがある。

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目に見えないものを目に見えないものとして(目に見えないけれどもとても意味のあるものとして)どう読者に伝えるか苦心しているという点。そして、文章を書く際には、過去をトレース(追跡)し、その過去の中に存在する人物や思いに文章を書かせる(語らせる)ようにしている点。


「自動筆記」や「人物が降りてくる」、といった感覚とも少し違うような気がして、ある過去の一時点に存在した思いや人物に寄り添う感じがして、とても興味深く拝聴した。


イベント後、早速『トリニティ、トリニティ、トリニティ』を読了した。まず、その独特なスタイルに惹かれた。一文一文、文章が区切られており、散文というよりも詩を読んでいるかのようなスタイルに新鮮さを覚えた。このような形式の小説は読んだことがないと思う。文章のリズムもとても良い。朗読してみると文章の音楽性がより際立つ。


率直な感想としては、内容自体も様々な要素が幾重にも絡まっており、難解な物語であると思う。大きなプロットとしては、2020年の東京オリンピックを前にして、「Trinity」という病気にかかった老人がテロルに走るというもの。そこに原爆、東日本大震災、戦争、性、女性3世代、ギリシャ神話、ベルリンオリンピック、目に見えない力、ジョン・ダンの詩などが複雑に絡み合っていく。2019年に書かれた本であるにも関わらず、最近の日本で起こったことを予言するかのような内容で、著者の日本の問題の本質を見極める力に驚かされた。


「専門的な知識を持った老人がトリニティになるのが、一番恐ろしい。」

「目に見えないものたちの逆襲が始まる。」

そしてこの本を通して喚起されるイメージは赤である。表紙の色と同じ様な赤。燃えているイメージ。血の色。聖火。


「空はあたり一面、いまにも燃え上がりそうな色に染まっている。」

小林さんは小説家であると同時に漫画家であり、ヴィジュアルアーティストでもある。この小説から立ち上がってくる視覚イメージは強く読者を捉えると思う。とても独特な作家に出会えたことを嬉しく思う。

 

“Trinity, Trinity, Trinity” by Erika Kobayashi (translated by Brian Bergstrom)


Today, I attended a fantastic event hosted by Yuki featuring Erika Kobayashi and Brian Bergstrom. About a year ago, when I talked with Brian, he told me that there is a superb artist and writer called Erika Kobayashi. Her name has always been on my radar ever since. I was impressed by her aspects of a scientist and researcher as well as her versatility of being a visual artist, cartoonist, writer.


The story was published in 2019. Reflecting on what has happened in Japan, this book already provided us with various premonitions which are accurate enough to make us even a bit frightened. The main plot is an attempted terrorist attack by an old man who is afflicted with a disease called “Trinity” before the Tokyo Olympics of 2020. It is intertwined inextricably with the Great East Japan Earthquake, World War II, and atomic bombs. The author succeeds in evoking gripping visual images through her crafted sentences and unique word choices.

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